大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和25年(を)2149号 判決 1950年12月19日

被告人

入谷英三

外四名

主文

原判決を破棄する。

被告人入谷英三同申茲具同金順玉を各懲役壱年に被告人辺鳳三を懲役拾月に被告人藤原秀雄を懲役参月及び罰金弐千円に処する。

但し、各参年間右懲役刑の執行を猶予する。

右罰金を完納することができないときは金五拾円を一日に換算した期間被告人藤原秀雄を労役場に留置する。

原審の訴訟費用は被告人入谷英三、同金順玉、同辺鳳三と原審相被告人金仲、同金永錫との連帯負担とする。

理由

本件控訴の理由は末尾添付の弁護人当別隆治提出の控訴趣意書の通りである。

よつて、所論の諸点を考慮し、記録にあらわれた各般の事情を斟酌すると、原審が被告人等に対し刑の執行猶予をしなかつたのは科刑不当に重いと考えられる。論旨は理由があつて、原判決は破棄を免れない。ところで被告人藤原は先に昭和二十四年十二月二十一日大津地方裁判所彦根支部で窃盗罪により懲役一年執行猶予三年に処せられているので本件において更に刑の執行を猶予し得るや否や多少疑義も存すると思われるので一言当裁判所の見解を説明する。本件は昭和二十四年五月末頃すなわち先の判決言渡前の犯行であることを特に留意する必要がある。換言すれば普通ならば先の犯行と後の犯行は併合して審理することができた筈である。これを併合して審理し得なかつたのは官憲の捜査が行届かなかつたためかどうかその理由は記録上不明である。しかしその理由の如何にあるにせよ、併合審理し得ないために先の裁判当時本件犯行が発見されていたよりも不利益な結果を生ぜしめるならば、それは併合審理をする場合においては刑の執行猶予の言渡をすることができることと著しく権衡を失することとなる。それゆえに先の刑の執行猶予の裁判言渡前の他の犯罪について更に裁判をするときは、これに対しても亦刑の執行猶予の言渡をすることができるものと解すべきである。そしてこの見解によるときはこの場合には刑法第二六条第二号の適用はなく従つて先の刑の執行猶予は取消すべきものでないこととなるのである。

よつて当裁判所は刑事訴訟法第三百九十七条により原判決を破棄し、直ちに判決することができると認め同法第四百条但書に従い次の通り判決する。(後略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例